雄勝石の粉を混ぜた粘土を使用して楽焼を行う陶芸ワークショップ

· Workshop

日時 2016年7月9日(土)10時~15時、10日(日)10時~17時

内容 雄勝石の粉を混ぜた粘土を使用して楽焼を行う陶芸ワークショップ

場所 波板地域交流センター「ナミイタ・ラボ」(宮城県石巻市雄勝町分浜字波板140-1)

対象 親子4組と波板地区の方々ほか(18名)

講師 松井利夫/陶芸家、京都造形芸術大学 教授

参加費 3,000円

協力 ナミイタ・ラボ(波板地区会)

宮城県石巻市雄勝町(おがつちょう)の歴史的な地域資源である「雄勝石(おがついし)」。

きめ細かく美しい黒色の玄昌石であり、良質な硯(すずり)の原料となることで有名で、明治以降は屋根材(スレート)としても利用されてきました。

この雄勝石を硯などに加工するときに出る石の粉を粘土に混ぜて、今までにない新しい焼き物づくりに挑戦します。

雄勝石の粉は、現在は特に使い道もなく廃棄するしかないものです。雄勝石を釉薬として焼き物に使用した例はありますが、粘土に混ぜた焼き物は、おそらく今までに誰も行なったことのない試みで、雄勝石の新しい可能性への挑戦でもあります。何ができるかはお楽しみ!

「新しい焼き物に挑戦!雄勝石×楽焼」ワークショップは、雄勝石を硯などに加工するときに出る石の粉を粘土に混ぜて、今までにない新しい焼き物づくりに挑戦するワークショップです。前半の「造形」と後半の「焼成」に工程を分けて2日連続で行われ、地元の高齢者の方々をお招きし、一緒に新しい焼き物づくりに挑戦しながら、地域間・世代間交流も図りました。

会場は、雄勝町波板地区にある地域交流センター「ナミイタ・ラボ」です。波板地区は、石巻市雄勝町で最も小さな集落ですが、「ナミイタ・ラボ」では、「限界集落の未来をつくる」を合言葉に、この地域の豊かな地域資源を活かして、次世代へと継承・育成する活動を行っています。

このような地域で継続的にワークショップを行うことが、地域にとっても、こども達にとっても大きく意味のあることと考え、昨年度に続き2度目の開催にご協力いただきました。

【1日目】

朝からあいにくの雨でしたが、4組の親子と地元の高齢者、こども芸術の村のサポーターの総勢18名の参加者が集まりました。

まずは松井利夫先生のレクチャーから。今回は単なる陶芸ワークショップではないこと、雄勝石の可能性を試みる一つの実験であること、結果を自然に任せて完成を待つ陶芸の面白さについてなどのお話があり、机の上に並べられた焼き物のサンプル品の説明がありました。

サンプル品は、粘土、釉薬について、それぞれ雄勝石の粉を混ぜる配合を変えて試作されたものです。一切粉を加えない白いものから、グレー、チョコレート色のグラデーションがきれいに並びます。雄勝石の粉が生み出す、深みのある美しい色合いに、参加した皆さんの発想も刺激されたようです。

さっそく制作に取り掛かる参加者の皆さん。雄勝石の粉を混ぜる配分は、それぞれに委ねられています。これくらいかな?もっと足そうかな?思案しながら、思い思いにまぜまぜ、こねこね。気がつけば、すっかり両手はグレーに染まっていました。

自分好みの配分で粘土を作ったら、今度は造形です。カップを作ってもよし。新しい生き物もあり?ホタテやエビフライも登場、どっしり大きなお皿も上等!とにかく自由に、制限なしが、こども芸術の村の流儀です。

形が出来上がったら、本焼きの前の乾燥です。

移動窯の組み立てもみんなで協力して行ないました。耐火レンガを積み上げては崩し、何度目かの組み換えの末に、みんなの作品が収まるスペース作りができました。上からグラスファイバーの蓋をかぶせて、プロパンガスで火を送り込みます。コンパクトで機能的な焼き窯に興味津々のこども達。松井先生の周りを取り囲み、熱心に観察していました。

火が入った頃、ちょうど雨もやんだので、窯のお世話は松井先生に託し、みんなで海へ遊びに行くことになりました。午前中、波板の浜には砂鉄があるんだよ、と地元の方から教わったので、砂鉄取りのために磁石も持って出かけます。

確かに黒っぽい砂が混じっている様子。試しに磁石で砂を探ると、しっかりとたくさんの砂鉄がくっついてきました。

砂鉄取りに夢中になるチーム、海に入って夢中になるチーム。どちらもかなりのずぶ濡れになっていましたが、こども達は大喜び。翌日の再会を約束して、1日目は解散となりました。

【2日目】

1日目とうって変わっての晴天。

青い海と青い空、山の緑がまぶしい波板での一日は、ちょっと早目の夏休みのようです。海遊びの準備も万端。着替えもビーチサンダルも、みんなしっかり持参してきていました。

本日は、いよいよ色付けと焼成です。

透明、白、黄色、青の釉薬が用意され、松井先生から釉薬の付け方について説明がありました。

お互いに協力しながら、思い思いに釉薬をかけていきます。もちろん1色とは限りません。ツートンカラーも、トリコロールもOKです。

ヒビが入ったりしたものなどは、松井先生が修理してくださいました。その修理作業の一つ一つにも、こども達の目はくぎ付けでした。

お昼を食べた後、焼きあがるまでの時間を使って、雄勝石の石切り場まで地元の方々にご案内いただきました。少し山道を登っていくと、そこには見事な原石が露出していました。

そばまで行き、切り出される前の雄勝石に触れるこども達。手だけで、ホロっとかけらが取り出せる個所もあります。昨日混ぜ込んだ雄勝石の粉が元々どんな姿をしていたのか、目の前で実物を体感することができました。

山から下りてきた後は、待ちに待った海遊び。今日はどれだけ濡れてもへっちゃらです。

晴れて気温も上がって海水温度も冷たくなく、昨日以上に思いっきり海で遊ぶことができました。

楽しそうなこども達を微笑ましく見守る地元の方々も嬉しそうでした。

予定よりも焼き上がりまで時間がかかり、終了時間が押してしまいましたが、参加者の皆さんと、急遽ヘルプをお願いした三輪田窯・亀山さんのご協力のおかげで、なんとか当日のうちに作品をお持ち帰りいただくことができました。

残念ながら窯の中で破裂してしまった作品もいくつかあったのですが、今回の挑戦によって、新しい雄勝石の焼き物が生まれる可能性を感じることができました。

これから試行錯誤を繰り返すことで、雄勝石を使った、新たな商品開発にもつながるかもしれません。

新しい焼き物への挑戦は、始まったばかりです。

broken image
broken image
broken image
broken image
broken image